2010年5月23日日曜日

AMMERLAND / FÜHRS & FRÖHLING








今日は雨ですね。。

うちのお店は細い階段をのぼって三階にあります。
二階には古本屋さんがあって四階はほぼ空家。
両隣は二階立てなので音に関しては比較的自由な音量で出せます。
雨の日やお客さんの少ない日には
ついつい音量をあげて遊んでしまいます。
二階のちんき堂さん、すみません。。
そんなときにかかせない大切な一枚のご紹介です。

スイスのシンフォ・プログレ・SFFのFFにあたる二人・
GERD FÜRHS-オール・ギターと
HEINZ FRÖHLING-ムーグ、メロトロン、グランド・ピアノ、シンセサイザー
によるBRAIN/METRONOMEから78年にリリースされたアルバム、ドイツ・BRAIN・プレス盤です。
シンフォ・プログレというと一般的にもプログレ的にもあまり人気の高い分野ではないですが
SFFは当時日本盤も出ていたようなのでそこそこ知名度のあるシンフォ・プログレのようです。
Sが抜けた二人はそれほど人気もなかったのか
今年になるまで本盤もリイシューされてなかったみたいですね。
というかリイシューCDが出たんですね、ついさっき気づきました。
アルバムは全体としてアコースティックなギターに
ムーグまたはメロトロンが絡む構成の
電子音ながらアコースティック色を前に打ち出したところが特徴となってます。
ときおりシンセ・ベース/シンセ・ドラムが入るほかは
(場合によっては不穏なベース音ですが)
ベース、ドラムが入らないためボトム・レスな電子音+アコースティック・ギターがつづきます。
アルバムはA-1・"AMMERLAND"にはじまり
B-2・"AMMERNOON"に終わるコンセプチュアルなアルバムのようです。
タイトルの意味が気になってたんですが
ドイツ語なのか二人の造語なのか調べてもわからなかったです。
"AMMERLAND"に対して"AMMERNOON"が対になっているようですね。

その最後の曲・"AMMERNOON"が異色でおもしろいです。
曲は鐘の音と男の話し声にはじまり
次第に不気味な笑い声もしくは泣き声とクワイアもしくはシンセ音に変わってきます。
そのあたりからシンセによって増幅されたと思われる低音が全編を覆ってゆきます。
その低音が半端なく低音でまさに"重低音"という音ですごいです。
通常お店でレコードをかけている音量でもガラスが響いてドアがカタカタなって
体全身にその音を体感することになります。。
その低音にも音階(?)があって一番低い音階のときにガラスが揺れます。。
低い音の響きの中にいると僕個人の特殊な嗜好かとても心地いいです。

店のスピーカーはタンノイ・スターリングを設置の都合で
コンクリートにベタ置きなので特に低音がよく響くようです。
この曲はおそらくこの"重低音"を楽しむための実験的な曲であったと思うけど
今MP3とヘッドフォンが主流の音楽環境ではその意図が理解しづらい曲です。
なので"レコードならではの曲だ"とでも書きたいところですが
リマスターCDを聞いたことないので書かないでおきます。
どうなんでしょうね、気になるところです。。
雨の日のレコードでした。

2009年8月16日日曜日

LORELEI ON THE ROCKS / LORI MORITZ



LORELEI ON THE ROCKS / LORI MORITZ

TRI-ADっていうオレゴン州のスタジオで
77年(?)ごろ録音され、
同名のレーベルからリリースされたこのアルバム、
LORI MORITZというピアノを弾きながら歌う
女性・SSW的なレコード。
ブルージーでサックスも入って
少しジャズ的な要素も感じさせる。
一曲目のイントロから何かを
感じさせてくれる気がしました。。

最初に聴いたときはその1曲目の印象が強すぎて
他の曲に目がいかなかったけれど
よくよく聴きなおしてみると
全体的にすばらしいアルバムだって気付いたので
ちょっと内容について書いてみようと思います。

アルバムはピアノ系・SSWにカテゴライズされそうな
ピアノ・弾き語りの曲が中心となってます。
全体的にはブルージーでロッキンな曲が多い。
だけどそのロックといっても、
バーのピアノでロックした感じのクールなそれで
ほんとはロックというよりもジャズの影響が濃い気がする。
それと少し趣が変わって
スピリチュアルな雰囲気が出ている曲も多い。
タイトルやジャケットも名前をもじっているとはいえ
プログレみたいな印象を与えているように思う。
B-4・"ALL I FIND"では実際にメロトロンまで鳴ってて
RENAISSANCEのような曲だったりもするので
そういう嗜好も一つの側面としてあったのかもしれない。

楽曲はカバー・4曲をのぞいてオリジナル曲となってます。
またそのカバー・4曲の選曲が渋くていい。

A-2・"BARRELHOUSE"
原題・"MAMA JUST WANTS TO
BARRELHOUSE ALL NIGHT LONG"
カナダを代表するアコースティック・SSWの一人・
BRUCE COCKBURNの77年のアルバム・
"CIRCLES IN THE STREAM"に収録。
オリジナルは未聴。LORIのカバーはバー・バンド的に
ブルージーで雰囲気があります。

A-4・"I AM THE MERCURY"
JIMMY SPHEERISの72年のアルバム・
"ISLE OF VIEW"に収録。
JIMMY SPHEERISはアシッドな雰囲気も
持ったアコースティック・SSWで
ジャケットもプログレのような
スピリチュアル色を出したものが多く
どれも繊細なタッチの楽曲が収録されていて
とても好きなSSWです。
また明るくAORタッチになった76年のアルバムも
方向性は変わりますがいいアルバムです。
LORIのカバーも呪術的な雰囲気と
ポジティブな力強さがあって
完成度の高い一曲になってます。

A-5・"JELLY JELLY"
オリジナルはAL GORGONI, CHIP TAYLORとの
GORGONI, MARTIN & TAYLORとしての活動や
ソングライターとしても活躍した
TRADE MARTINによる作。
ALLMAN BROTHERS BANDの
"BROTHERS AND SISTERS"で
有名な曲というかそれがオリジナルになるのかも。

B-3・"NEW COAT OF PAINT"
TOM WAITSの74年・2ND・アルバム、
"HEART OF SATURDAY NIGHT"に収録。
アルバム冒頭を飾る一曲で
彼の代表曲とも言える一曲でしょうか。
LORIのカバーも一聴してTOMのカバーと
気付かせてくれそうなほどTOMの影響は濃いようです。
この曲に通じる"バーでピアノ弾いて歌ってます"的な感じは
アルバム全体に通じている気がします。

自作曲はブルージーな曲が多いですが
その中でも特にA-1・"MUSIC BRINGS ME CLOSER"と
B-3・"MICHAEL'S SUNRISE"の出来がすばらしい。
この2曲はブルージーな要素は少し薄まって
叙情的でまた力強さのあるというか、
ポジティブなメッセージが伝わってくるようなヴォーカルと
おしつけがましくないけど馴染みやすいメロディがあって
よくできた曲だと思いました。
ちょっと違うけどもCAROLE KINGなどに通じる部分もあるかもしれない。

アルバムの最後・B-5には"ZHANDELLA"と題された
リリカルなピアノとバイオリン、ヴィオラ(?)、チェロ(?)、
(少しですが)リコーダーによる叙情的なインスト曲で
タイトルの意味はよくわかりませんが
ちょっとプログレっぽくもあり
アルバムに奥行きがついたかのようで
意外とアルバムの締めくくりとして落ち着きます。

ちなみにジャケ写はGENE MORITZとなっており
旦那か兄弟か知りませんが
とにかく手作り感のあるアルバムのようですね。

個人的にはやはり
"MUSIC BRINGS ME CLOSER"がよくて
ひさしぶりに(マイ・テープのような)コンピCDをつくったのも
この曲を多くのヒトに聴いてもらいたいと思ったからです。
音楽賛歌にも聞こえるこの曲は
中古レコード店・経営者をとても励ましてくれたのでした。。。





2009年6月6日土曜日





VANCE OR TOWERS / VANCE OR TOWERS

GLEN VANCEとMICHAEL TOWERSという
おそらく無名の二人による
アコースティック・ポップ・デュオ・VANCE OR TOWERSの
A&Mから75年にリリースされた唯一のアルバム。
まずはジャケットを見てとても惹かれるものがあった。
ルックス的にもティーネイジのファンがつきそうな
二枚目風なルックスでどこかコミカルな表ジャケット。
裏ジャケを見れば笑みが
やや引き攣ったものに変わっており
バック・ミラーにおかしなものが写ってて。。
SANFORD AND TOWNSENDの
"DUO GLIDE"ってアルバムも
ちょうどこんな感じの裏表のコミカルなジャケットで
それ以外にもたくさん思い浮かぶジャケットは出てきそう。
だけどこのデュオに関してはほかに"まつわる話"がとてもおもしろく、
その点ではほかに類を見ないかもしれない。。

内容的には英国の影響濃いポップさが強く感じられる。
EMITT RHODESを思わせる
メロディとヴォーカルまたは声質、
それとPILOT風のコーラスの重ね方が
ニッチな英国ポップを彷彿させる。
二人とも経歴はさっぱりわからずじまいで、
録音にかかわったミュージシャン、プロデューサーともに
無名なもので英国出身かとも思ってしまった、
おそらくUSなんだろうけども。

このアルバムからはシングル・カットが2曲。
"SCREAM BLOODY RUBBERY"と
"DO WHATEVER WE WANT"。
ともに軽快なパワー・ポップなロックン・ロール。
アルバムとしては"PRESENCE OF HER ABSENCE"などの
ストレートなポップ・ソングに聞こえる
ひねりを効かせたメロディックな楽曲が
このアルバムの大きな魅力になっているようだ。

しかしYOUTUBEやネット上で登場するのは
"EDUCATION BLUES"という曲。
初期STEVEN KINGの代表作・76年の
センセーショナルなホラー映画・"CARRIE"の中で
そのハイライトに
プロム(卒業パーティー)・バンドとして出演して
その曲をを演奏しているからだ。
どうやらアルバムのバージョンは
映画のと別バージョンのようだけれども
どういった経緯で出演したのかとても不思議な気がする。
前述のシングル曲のタイトルや、
ジャケットのコミカルだけれど
オカルトなオチも含め
なにやらとてもミステリアスな部分が出ている。

ちなみに76年にプロモのみで
シングルが一枚リリースされたらしい。
曲はCARPENTERS・76年のヒットで知られる
"CAN'T SMILE WITHOUT YOU"。
A&Mが2匹目のドジョウを狙ったと思われるシングルは
結局ヒット以前にリリースもされず、
2年後の78年にARISTAでBARRY MANILOWが
大ヒットを飛ばすことになった。

のこされたすべての情報がとてもニッチなお二人は
中身の音楽を聴かずしてもとても楽しませてくれる。
しかし内容もインパクトはやや薄いものの
よくつくられた良質なポップ・アルバム。
多くのヒトに"知ってもらいたい"
じゃなくて"聴いてもらいたい"レコードです。